人口と少子高齢化の世界統計
日本語

都道府県別「出生数の減少」と「出生率の低下」は、なぜ順位が入れ替わるのか

人口と少子高齢化について、世界の統計を定点観測する

トップ読みもの

ランキングの前に知っておきたいこと

都道府県別の出生動向を比べるとき、最初に分けて考えたいのが「出生数」と「出生率」です。出生数は、その地域で生まれた子どもの人数を示します。地域の規模や、子どもを産む年齢層の女性がどれほど住んでいるかによって大きく左右されます。

一方、出生率は、一定期間における出生を、母となり得る年齢層の女性人口との関係で示す指標です。人口の多い地域と少ない地域を同じ土俵で比べる際には、出生数だけを見るより、地域の人口構成を踏まえた比較がしやすくなります。

したがって、「出生数の減少ランキング」と「出生率の減少ランキング」は、同じ順位になるとは限りません。大都市のように女性人口が多い地域では、出生率が低下しても出生数の規模が大きく残ることがあります。反対に、人口規模が小さい地域では、出生数の変化が小さく見えても、出生率の落ち込みが目立つ場合があります。

二つのランキングが示す地域の違い

比較する指標主に分かること読み取りの注意点
出生数の減少地域で生まれる子どもの人数の変化人口規模の影響を強く受ける
出生率の減少女性人口に対する出生の変化年齢構成や分母の設定を確認する
母の年齢階級別出生率どの年齢層で出生が変化したか全体の出生率だけでは背景が見えにくい
合計特殊出生率一人の女性が生涯に産む子どもの数を仮定した指標実際に生まれた子どもの人数とは異なる
標準化出生率年齢構成の違いを調整した比較調整方法や基準人口を確認する

この表から分かるように、順位は単なる優劣ではありません。出生数の減少が大きい地域は、人口の集中や流出、若い世代の規模などを含んだ「地域全体の変化」を映します。出生率の減少が大きい地域は、出産年齢層の女性人口を分母に置いたときの変化を示します。両者を並べることで、人口規模による影響と、出生行動に関わる変化を切り分けて考えられます。

年齢別の表を重ねて読む

厚生労働省の統計には、母の年齢階級別に出生数、構成割合、出生率を確認できる表があります。これを使うと、地域全体の出生率が下がったという結果だけでなく、どの年齢層の出生が変化したのかを調べられます。

たとえば、全体の出生数が減っていても、特定の年齢層では変化が小さいことがあります。反対に、全体の出生率の変化が限られていても、複数の年齢層で出生が弱まっている可能性があります。年齢別の内訳を見ないまま都道府県の順位だけを報じると、地域の特徴を一つの数字に押し込めてしまいます。

また、母の平均年齢や出生順位、職業の区分を含む統計もあります。これらは、出生の変化を単一の原因に結びつけるための資料ではありません。どの層で変化が表れているかを確かめ、地域差を多面的に読むための手がかりです。

指標の違いを越えて比較するために

都道府県別の減少ランキングを作る場合は、まず同じ対象期間の統計をそろえ、出生数と出生率を別々に並べる必要があります。そのうえで、分母となる女性人口の範囲、年齢構成の調整の有無、確定値か推定値かを確認します。異なる定義の指標を一つの順位表に混ぜると、比較の意味が変わってしまうためです。

栃木県の資料のように、市町村別の合計特殊出生率を扱う統計もあります。ただし、都道府県別の出生数や、母の年齢階級別出生率とは、対象地域と指標の設計が異なります。市町村の傾向を都道府県の順位へそのまま置き換えることはできません。

出生数と出生率のランキングは、地域を評価するための採点表ではなく、人口構造の変化を別の角度から照らす道具です。順位の背後にある分母、年齢構成、地域規模を確認してこそ、日本の少子化を地域ごとの違いとして読み解くことができます。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411599

https://winet.nwec.go.jp/toukei/search

https://www.pref.tochigi.lg.jp/e09/pref/toukei/sonota/tfr-smr.html

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002061811